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2022 Japan AWS Top Engineer / 2022-23 Japan AWS Certifications Engineer。AWS認定12冠、情報処理試験全冠。顧客フロントSEがなるべく手を動かしながらIT技術を学んでいくブログです。

地味に嬉しい!re:Invent 2022で発表されたAWS MGN新機能

 2022年11月28日~12月2日にAWS最大のカンファレンスイベントであるAWS re:Invent 2022」アメリカ ラスベガスで開催されました。100以上のサービスアップデートが発表された中で、今回はマイグレーション分野で唯一発表されたAWS Application Migration Service(AWS MGN)から4つの新機能をご紹介します。華やかな新サービスに比べると地味に感じますが、利用者にとっては嬉しい機能ばかりです。
 AWSへのマイグレーションを検討されている方、推進している方のご参考になれば幸いです。

AWS MGNとは?

 AWS Application Migration Service(AWS MGN)とは、物理・仮想・クラウド上のあらゆるサーバを自動でEC2インスタンスにコンバートしてくれる移行サービスです。2021年5月に一般提供されて以来、AWS移行の推奨サービスに位置付けられています。
 AWS MGNについては、これまでハンズオンや実際に使ってみて分かったことを過去のブログでまとめています。

frontse.hatenablog.jp frontse.hatenablog.jp

 ではここからre:Invent 2022で発表されたAWS MGNに関する4つの新機能をご紹介します。AWSブログでは下記サイトで紹介されています。

AWS Application Migration Service の主な更新 – 新しい移行サーバーのグループ化、起動テンプレートおよび起動後テンプレートの更新 | Amazon Web Services ブログ

新機能1:Applications & Waves

 どちらも移行対象のサーバをグルーピングする機能です。機能はほぼ同じですが、利用用途が少し異なります。Applicationsは同一システムを構成するサーバ群を集約するために使います。とあるシステムのAPサーバ、DBサーバなどを1つにまとめるイメージです。

 一方、Wavesは移行タイミングが同一のサーバまたはApplicationsを集約するために使います。必ずしも同一システムではなく、例えば「開発環境のサーバ群を一括で移行したい」という時に利用します。

 つまりApplicationsはシステム群、Wavesは時間軸によるグルーピングと考えると分かり易いと思います。Applicationsの構成要素はサーバだけなのに対し、WavesはApplicationも構成要素の1つのいうところもポイントです。使い分けとしては、まずApplicationsでグルーピングし、それで対応できないユースケースが生まれた場合は補足的にWavesを使うというのが良いと思います。

 ApplicationsもWavesも構成要素のステータスをグラフ化したり、一括でステータスを更新することが出来ます。移行対象のサーバ数が多い場合、画面操作が減るので作業の簡略化・作業ミスの防止が期待できますね。

新機能2:Launch Template

 従来は各サーバ個別に定義していた起動設定(Launch settings)のデフォルト値を定義できる機能です。2022年8月にMAP2.0向け自動タグ付け機能は追加されていたのですが、より広い範囲の定義が行えるようアップデートされました。

 EC2インスタンス作成時にサーバ起動も行うか、等の設定を行う「General launch settings」とインスタンスタイプやサブネットを指定する「Default EC2 Launch Template」の2箇所が対象箇所です。これまではサーバ毎に設定する必要があったのですが、デフォルト値を指定することで作業量を減らすことが出来ます。

新機能3:Post-Launch Template

 サーバ起動後に自動実行する処理を定義できます。従来は「AWS Systems Managerエージェントのインストール」「AWS Disaster Recovery Serviceエージェントのインストールと設定」「CentOS→Rocky Linuxへの変換」「SUSEサブスクリプションAWS提供のものに置き換え」の4つのみでしたが、Custom ActionとしてAWS Systems Manager(SSM)ドキュメントを指定できるようになりました。

Custom Actionとして複数のSSMドキュメントを指定した場合、Orderの値が小さいものから実行するよう実行順序を指定することが出来ます。

 個人的には今回発表された中でこの機能が最も便利だと思っています。SSMやCloudWatchエージェントをインストールする、パッチを適用する、AMIを取得するなどMGNでサーバ移行した後に実行したい作業はたくさんあり得ます。それらを自動実行してくれるのは作業量を減らすだけでなく、本番運用をAWSへ切り替える際のシステムダウンタイム短縮も期待できます。

新機能4:再起動後の再スキャン不要

 従来はソースサーバを再起動すると、ソースサーバのディスク上のすべてのデータを再読み取り(=再スキャン)していました。今回のアップデートで、下記サイトに記載されているサポートOSであれば再起動後も再スキャンが実行されなくなりました

Which Windows and Linux OSs support no-rescan upon reboot? - Application Migration Service

 これまではMGNでデータ複製を開始した後、ソースサーバで再起動を行わないことがベストプラクティスでした。そのため定期的な再起動を行っているサーバの場合、再起動運用を停止するという対応が必要だったのですが、それが要らなくなりました。 MGNは本番運用をしている最中にデータ複製を行える、というのが大きなメリットなので、その本番運用を変更しなくてよい、というのは嬉しいアップデートだと思います。

まとめ

 今回はre:Invent 2022で発表されたAWS MGNの新機能をご紹介しました。機械学習、IoTといったサービスと比べると地味ではありますが、実際の移行プロジェクトでは有効な機能ばかりです。 これらの機能も活用しながら、より快適なAWSマイグレーションを実現していきたいですね。