仕事を振られたら反射的に「がんばって」いませんか?
それこそが日本人の生産性が低い原因です!!
Googleで人材育成統括部長だった著者は、Googleの働き方をベースに10倍(=10x)の成果を出すパラダイムシフトを提案しています。
日本人には耳の痛いことばかりで、多くの方が学ぶところがある書籍ではないでしょうか。
『がんばらない働き方』
本の概要
2019年1月に初版が出版されています。
2020年にはオリラジあっちゃんこと中田さんがYouTube大学で紹介していました。
著者はピョートル・フェリックス・グジバチ氏。
モルガン・スタンレーやGoogleで人材開発、組織改革、リーダシップマネジメントなどに従事していました。
ページ数は約250ページ。
読みやすい日本語で、数日あればスラスラと読めてしまいます。
本の構成
1章 なぜ「がんばらない」ほうがうまくいくのか?
2章 to doをこなそうとがんばっていませんか?
3章 ”意図のないX”をやめよう
4章 自分の影響力が上がるネットワーク術
5章 「インパクト」が大きくなる働き方
6章 「心理的安全性」をキープする方法
7章 自分にしかできない「新しい価値」の生み出し方
1章でなぜ「がんばらない」ことが必要なのかの理由を説明しています。
2~6章で具体的な働き方を提示し、
7章でそれらの方法をベースにした仕事へのマインドをまとめています。
全体通じて、著者のGoogle時代や起業後の実体験から「日本人はよくこうするけど、こうすべきだよね」という指摘をしています。
「なにくそっ!」「そうは言うけどさぁ・・・」と思う方もいるかもしれませんが、それこそが著者の指摘が図星だという現れですよね(私自身がその一人でした)。
客観的視点からのありがたい指摘だと思い、素直に受け取りましょう。
本の要約
がんばらないことの定義
「がんばらない」というのはタイトルをキャッチーにするための極端な表現ですが、要は「不要な仕事を捨て、やるべき仕事にフォーカスしよう」がこの本の軸です。
これって『7つの習慣』における第3の習慣:最優先事項を優先するそのものなんですよね。
『7つの習慣』では、重要なタスクから予定化し、重要でないタスクは人に任せる・断るなど、出来るだけ無くすようにしよう、と述べていました。
この「重要でないタスクは人に任せる・断るなど、出来るだけ無くす」に特化して更に具体手法や考え方に踏み込んだ本だと言えると思います。
『7つの習慣』については、以下で要約しているのでご参照ください。
3つの「捨てる」と2つの「コミュニケーション」
「がんばらない働き方」を、3つの「捨てる」と2つの「コミュニケーション」にまとめて要約します。
「to doリスト」を捨てよう
2章の内容です。
to doリストを作ると「インパクトが小さく、学びも少ない」作業ばかり頑張ってしまう危険性がある、と著者は述べます。
そこで「to doリスト」は捨て「not to doリスト」で本当に必要なタスクに注力しようと提案します。
具体例として挙げられているnot to doリストに入ることは下記です。
- メールをやめる
- ミーティング後の資料(議事録)作成をやめる
- 会議中の「持ち帰って検討」をやめる
- 服を選ぶことをやめる
無駄なタスクで時間を埋めるくらいなら、将来への投資(自己研鑽など)や休息に時間をあてたほうがよい、とも述べています。
「これって無駄だな」と明確に思う仕事は無くとも、「これって本当に必要なんだっけ?」「こんなに急ぐ必要ある?」と一度立ち戻ることは有益だと思いました。
求められたことを100%全てやることが優秀な人材なのではない。
全体最適を考えればやらない・断るタスクもあり得るのだ、と言うのは案外頭から抜け落ちている考え方ではないでしょうか。
「アジェンダが無い会議」は捨てよう
3章の内容です。
会議の目的は次の4つしかないと述べています。
意思決定 | ある提案について、選択肢のなかから1つの結論に絞り込む作業のこと。 |
---|---|
アイデア出し | ブレインストーミングによってたくさんのアイデアを出す作業のこと。 |
情報共有 | 既に決まったことを共有し、メンバーに納得してもらう作業のこと。 |
チームビルディング | 人間関係づくり、信頼関係構築のための会議。 |
このどれを目的にし、何を議題にするのか予めアジェンダも出さずに集まろうとしている会議なんでやめてしまえ、というのがここでの指摘です。
なんとなく上記いずれかに当てはまりそうな気はするものの、はっきりと明示していない会議はたくさんある気がします。
また「予め」アジェンダを出すことも、参加者がそれに向けた心構えや準備を行い、より効果的な会議ができるという点において重要なポイントです。
そこから派生して、予め進め方やゴールをすり合わせてタスクを振ろう or 受け取ろうということも述べられています。
日本では「進め方を考えるのも勉強のうちだ」と明確に指示せずタスクを振る習慣があると思うのですが、それが本当に効果的なのか?は考え直したほうが良いですね。
「ロジカルシンキング」を捨てよう
5章の内容です。
ロジカルシンキング自体を否定しているのではなく、「決して万能ではないから使うシーンを選ぶべき」という指摘です。
ロジカルシンキングは、考えをまとめて、誰かに説明するためのツールです。コンサルタントが良く使うフレームワークも、アイデアを説明するためのツールであって、アイデア出しのときには、あまり役に立ちません。
(出典)本書179ページ
ゼロから何かを生み出そうとするときはフレームワークや数値分析より、直観やメンバーとの話し合いのほうが良いこともあるということですね。
また、アイデア出しの時に1人が案を持ってきて話す方法(=プレゼン型)はその良し悪しを評価する会議になりがちなので、テーマだけ決めて人を集めてしまうほうがよいとも言っています。
アイデア出し目的の会議で「私が叩き台を持ってきますね」と良くやるのですが、それをしちゃうと他のメンバーが叩き台頼りになって何も準備しない、というのは確かにありがちです。
「各自アイデア持ち寄って雑多にブレストしましょう」のほうが全員が能動的な会議になりえるのは間違いないので、ファシリテーション方法は一度見直すべきですね。
「人脈を育てる」コミュニケーション
4章の内容です。
人脈を「広げる」ではなく、あえて「育てる」と表現しました。
「広げる」と表現すると、手あたり次第色んな人と交流し、名刺交換し、会食するイメージに繋がりそうですが、それは本書で否定されています。
これまでの「捨てる」考えとも繋がるのですが、誰と会わないかを選択することも必要です。
①変革層 | 社会に変革を起こす影響力を実際に持っている |
---|---|
②実践層 | 「こうしよう」という実験と工夫を繰り返し実践している |
③変えたい層 | 「変えなきゃ」と思いつつ実行力と勇気が足りない |
④気づいた層 | 「このままじゃダメだ」と自覚しつつも半ば諦めている |
⑤ゆでガエル層 | 現状に満足していて変化の必要性に気付いていない |
著者の会社では上の5つにビジネスパーソンを分類し、著者が1vs1で会うのは①レベルの人に限定しているそうです。
自分や人脈を育てるために、今の自分のレベルを踏まえて自分の時間を割いてでも会うべき人を選ぼう、という提案しています。
非常にドライな考えだとも思いますが、私自身も①や②の人と交流した時の刺激や焦りは鮮明に覚えており、自分の考えを広げてくれた経験があります。
逆に自分と似た考えの人とばかり会っていると⑤になってしまうので、会う人を選ぶべきだという提案は真っ当なものだとも感じました。
「心理的安定性をつくる」コミュニケーション
心理的安全性とは、組織のメンバーが「自分は信用されている」「必要とされている」と感じられる状態、あるいは建設的な意見の対立をが推奨される状態と定義しています。
日本では上司の言うことは絶対、上司の機嫌を損ねないために忖度するということが往々にありえます。
この状態が良いものではなく、パフォーマンスを悪化させているということは多くの人が同意すると思います。
それを脱するための方法が「心理的安定性をつくる」というものです。
これはどちらかと言えば上司や先輩側が意識すべき考えです。
- グチが言える職場を作る、グチ会を開催する
- メンバーと飲みに行ったりコミュニケーションをとる
- とはいえ相手のプライベートに踏み込む質問はしない
- オープンクエスチョンで質問する
例えば上記が具体的な方法として提示されています。
私自身も心理的安全性がある状態、ない状態の両方を経験したことがありますが、後者の場合は上司・先輩のレビューを通すことが目的となり、顧客の為にならない本質的でないタスクに注力してしまっていました。
前者は悩みや課題を早めに打ち明けることができ、建設的な議論ができるため圧倒的にパフォーマンスが良かったです。
自分もチームリーダや先輩の立場になることが増えてきているので、今後この考えは意識しておきたいと思いました。
まとめ
本書のエッセンスを私なりに、3つの「捨てる」と2つの「コミュニケーション」に整理してみました。
この中でも個人的に響いたのは「to doリストを捨てる」「心理的安全性をつくるコミュニケーション」の2つです。
がむしゃらにがんばることは辞め、自分の頭を使って効率的な仕事をしていきたいです。