私が勤務する会社にもグローバル化の波が押し寄せてきています。
これまでは日本語が話せる中国パートナーとの協業くらいでしたが、英語で欧米や東南アジア、インドのパートナーと協業するプロジェクトがチラホラ出てきています。社員にも少しずつですが外国人の方が増えてきました。
このような環境下で仕事する際、もちろん語学は最低限必要なのですが、それに加えて何に気を付ければグローバルに良い関係が築けるのかについて考えてみます。
なぜ今回このようなことを考えたのかというと、まさに「グローバルマネジメント研修」という社内研修を受けたことがきっかけです。
以前から英語や外国人とのコミュニケーションがどうも苦手で、出来る限り避けて生きてきました。
ただこれからの人生、仕事においてもプライベートにおいても、自分の世界を日本だけに限定してしまうのは損だなとも思います。自分の意欲さえあればインターネットの世界でグローバルにいろんな人との接点を持つことができるからです。
今後の引き出しにすることを目的に、社内研修での学び・気づきを自分なりに整理した「グローバルマネジメント」について述べていきます。
※研修の内容に直接的には触れません。自分の気付きとググれば出てくる情報を体系化していきます。
グローバルマネジメントとは
ここでの「グローバルマネジメント」の定義は、外国人を含む多様なメンバーをリーダーとして管理する際のスキル・ノウハウとします。
良きチームリーダーやマネージャとしてプロジェクトを成功裡に導くには、メンバーからの「信頼と尊敬」を得る必要があります。そのメンバーが日本人以外も含む場合、今回整理するポイントが活きてくるはずです。
ここで外国人「を含む」という表現にしているのは、日本人同士のコミュニケーションにも多分に活かせる箇所があると考えるからです。なので、外国人と仕事することは無いけど自分とは考え方が違う人と仕事する場合にも参考になるかと思います。
グローバルと日本の違いとは
なぜグローバルメンバーと仕事をするのが難しいのでしょうか。
もちろん言語の問題もありますが、日本人同士では意識することもなく常識になっている考え方や価値観が通じない、とうシーンが多々あるからだと思います。
具体的にいくつか挙げてみます。
High Context / Low Context文化
日本人は1から100までを全て伝えずとも空気を読む文化です。
言語以外の社会・環境などで伝える情報が多いことを「High Context」と言います。
日本は世界の中でも群を抜いてHigh Context文化だそうです。
そのせいで外国人から見ると「なぜそうなった?」と思うシーンが多々あるようですね。
逆に伝えることは全て言語化することが「Low Context」です。
日本人の感覚で「言わなくても分かるでしょ」と思っていると、外国人には全く伝わっていないということがあり得ます。
これがグローバルと日本の価値観の違いの1つです。
アウトプットに対する考え方
仕事におけるアプトプットに対して重視する点も異なります。
日本人は「ミスは許されない」と考えるので、きっちり時間をかけて100%のものを出そうとします。
一方で外国人は最悪精度は若干落ちてもスピード感を持ってアウトプットすることを良しとします。
それゆえに「海外パートナーが出してくるシステム、納期短いのは良いけどバグ多くない?」ということもあり得るかもしれません。
求められるスキルセット
日本では求められるスキルセットが曖昧です。
システムエンジニアと言っても顧客調整もするし、新規案件提案もするし、アプリ開発も保守もネットワークやサーバ等のインフラを保守することもあります。
それ故「結局自分って何ができるんだっけ?」となりがちだと思っています。
海外では、各メンバーに求めるスキルセットをJob Descriptionで定義します。
「私はネットワークエンジニアだからネットワークタスクだけ」、「あなたはプロジェクトマネージャだから管理に特化」という風に明確に役割が分かれています。そのためメンバーを(表現悪いですが)部品のように入れ替えやすく、退職・転職もしやすいのだと思います。
また、専門がはっきりしているので「自分のスキルはこれです!」と公表し、それを他者がLinkedinなどで推薦することでその道の専門家としての立場を確立していく仕組みができています。
海外と仕事するときに気を付けるべきこと
お互いの価値観・考え方の違いを踏まえたうえで、何に気を付ければ上手くグローバルにマネジメントできるようになるでしょうか。
ここから私の学びから5つのポイントを挙げていきます。
1.アサーティブコミュニケーション
アサーティブコミュニケーション(Assertive Communication)を直訳すると「断言的な伝達」となるのですが、意訳するなら「自信を持って言葉ではっきり意思表示すること」だと思います。
特に日本人は、衝突しないよう問題や依頼事項は直接的に伝えず「暗に」伝えますが、はっきり意思表示することこそグローバルマネジメントには求められます。
- 日本でうまく伝わらないのは聞き手の責任(何で同じこと言わないといけないの?)
- グローバルで上手く伝わらないのは話し手の責任(もっとClearに話して)
とはいえグローバルメンバーも人間です。ただ「あなたはここがダメです」と伝えるだけではハレーションもおきます。そこで次の2・3のポイントも併せて意識します。
2.理由・利益を伝える
日本では組織の為に個人を殺し、上司が「やれ」と言えば黙ってやるのが美徳とされることがあります(やや古い考えかもしれませんが、まだ残っているのが実情)。
一方でグローバルではJob Descriptionもあるので、そこから少しでも外れることは「なぜ私がそれをやらないといけないの?」となります。
スムーズに動いてもらう為には、それをやる理由や(会社やチームではなく本人に対する)利益を伝えることが重要です。
また自分の失敗談を伝えて「こうならないようにするには・・」というのも有益だと思います。この場合はOpen Mindによる信頼関係も築けるかもしれません。
3.サンドイッチ話法
ネガティブなことをはっきり伝えるには、まずポジティブなことを伝えた後にするとよいかもしれません。また、最後にフォローを入れるとより良いです。
サンドイッチにおけるハムや卵などの具材を「伝えたいネガティブな事項」とし、それを「ポジティブな事項」であるパンで挟むのでサンドイッチ話法と言います(正式名称じゃないです、私が勝手に命名してます)。
日本人に対しても同じかもしれませんが、外国人は専門性が立っているが故の退職・転職が激しいので、メンバーが今の環境で働くモチベーションを保つことへの意識はより高める必要があります。
4.Customer Second is the best Customer Service
ここは講師の方のコメントを紹介させて頂きます。
Customer Secondとは、Employee Firstであることを意味しています。
たとえ顧客であっても納得できない、従業員にデメリットがあると判断した要請・要望は断るという考えです。
ただしこれは顧客をないがしろにするという話ではないです。Customer Secondであるので依然として顧客は重要な存在である、という点もありますし、従業員が気持ちよく自分の専門性を発揮することこそが最大のCustomer Serviceであるということ意味します。
また、これは顧客からメンバーへのクレームが入った場合なども意識すべきことです。顧客が言うことを100%信じて頭ごなしにメンバーに改善を求めるようだと信頼を失います。顧客=日本人、メンバー=外国人だった場合は特にです。メンバーは「日本人びいき、外国人の自分を信じていないんだ」というイメージを与えかねません。
まずメンバーを信用する。その上でどこにギャップがあるのかを探るスタンスが重要です。
5.宗教への配慮
最後は日本人にとって意識が薄い「宗教」についてです。
ユダヤ・イスラムなど一部の宗教信仰者にとって、仕事・家族よりも最優先すべきは「神」だという考えがあります。
従ってどんなにプロジェクトが佳境でも、どんなに体制が薄くても、メンバーが礼拝などの宗教的事由で休むならそれを拒むことは誰もできません。
マネージャとしてはそれを前提としたうえで体制を考える必要があります。
まとめ
研修を受けて自分なりに「グローバルマネジメント」が必要な理由とその手法を整理してみました。
まとめてみて改めて思ったのは「これって日本人同士のコミュニケーションでも意識すべきことだよな」ということです。外国人と接するときはそれが顕著であるだけで度合の問題だと思います。
普段日本人とのコミュニケーションでもこれらの点は意識しつつ、いざグローバル案件に対応することになった際にすぐ自分の引き出しとして使えるよう研ぎ澄ましておきたいです。